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顔面神経麻痺発症後5か月しか経っていないのに、すでに後遺症状が完成されて手遅れにも思えるような状態に見えた顔面神経麻痺症例。 39歳 女性
5か月前の夕方に、顔のひきつり感と舌に痺れを感じて「脳梗塞にでもなったか」と思い。救急で大病院にかかったが、その時は血圧が200mmhgほどあった。、翌日耳鼻科を紹介されて受診し、末梢性の顔面神経麻痺と診断された。とにかくしんどくて自分で入院を希望し一週間ステロイドの点滴をおこなった。発症から10日後、病院耳鼻科での顔面神経麻痺評価点数は6点であった。発症16日後から以前通ったことのある治療院で週2回の治療を始めた。週のうち1回は鍼治療を行い。その時は顔には治療せず自律神経を整える目的で鍼治療を行った。週のうちもう1回は顔にゼリーを塗ってローラーで顔をこグリグリこすりながら通電をする治療と、手指で顔を掴んだりマッサージする治療をおこなった。治療する先生は顔面神経麻痺治療の経験が無いとのことであった。また自分でも熱心に表情筋運動やマッサージを行ってきた。当院初診時の顔の状態は、口に力を入れると目が細くなるといった発症5か月とは思えないような顔面神経麻痺後遺症と。精神的な不安定さが際立って見えた。
■診察
[ 初診 ]
当院初診時。顔面神経麻痺発症から5か月時点の顔面神経麻痺評価点数は28点であった。患側の「右の顔と頭が重く固く、目の周囲から鼻にかけてダルク固い。頭全体が締め付けられる」「頬から耳周囲がジンジンする」「じっとしていても右顔が斜め上に引っ張り挙げられる。後頭部から前頭部が上昇する」。身体を動かしても体が上に突き上げられるような感じがある。「唇が分厚い感じがする」。といった通常の顔面神経麻痺症状の訴えには見られないような訴えをされた。
パニック様の状態になりそうで安定剤を服薬されており、顔が上気して落ち着いておれない様子であった。表情を作ると目が細く小さくなり、顔がクシャッとなる神経混戦による共同運動が目立つ。耳の閉塞感があり、物を噛むと目が閉じると言った症状の訴えがある。
普通顔面神経麻痺後遺症は顔面神経麻痺発症後4か月経過したあたりから出始める。最初の兆候は瞬きをすると口元がピクピク動くと言った感じから始まることが多い。
しかしこの患者さんは発症後5か月めで、一般的には後遺症が出はじめの時期だが、鼻や口は患側に寄り、右上唇は斜め上に稍々上がり気味になっている。また口を動かすと患側の目が細くなる共同運動が見られた。さらに笑顔などの表情を作ると、表情筋は動くがそのあと固まってしまい手で戻さないと表情筋が元に戻らない状態になった。これらの症状は顔面神経麻痺重度の方でも発症5か月目で出るような症状ではない。
治療は鍼灸治療と遠絡療法による自律神経調整をおこなった。今後週2回の治療を行うこととした。
[ 1回目~7回目の間]
頭のしめつけ感消失。上半身を動かすと体が上に突き上げられる感じが消失。耳の閉塞感消失。顔の共同運動が筋肉の大きな塊のように固まった動きだったのが、筋肉がほどけ分離して動くようになった。
[ 8回目~12回目]
当院初診から1か月経過した。当初安定剤を飲まないとじっとしていても顔が斜め上に引き上げられる感や、後頭部から前頭部が上昇する感じがあったが消失し安定剤も飲んでいない。パニック様症状はまったく楽になった。メソメソしなくなった。顔面神経麻痺評価点数は30点。
[ 13回目~30回目]
当院初診時から3か月経過。顔面神経麻痺発症から8か月経過。この間耳周囲のジンジンした感じ消失。上唇の感覚が戻ってきた。表情を作ると、筋肉は動くがそのあと手で戻さないと筋肉が元に戻らなかったが手で戻さなくても戻るようになった。麺類はすすれない。目の周囲のだるさが軽減した。ゆっくり話さないと滑舌が悪い。また早く話すにも口元がついていかない。
[ 31回目~50回目]
当院初診時から7か月余り経過。顔面神経麻痺発症から1年が経過。この間は顔面神経麻痺症状の軽快と顔面神経麻痺後遺症の進行との戦いに、仕事の疲労とストレスが加わっての訴えとなった。麺類をすすると眼下に力が入る。口の中を手で触る動作で目が閉じる。顔面神経麻痺評価点数30点。
[ その後の経過]
当院初診から1年経過した時点で週1回の治療とし、その後3か月、計1年3か月間治療をおこなった。最終的な顔面神経麻痺評価点数は32点。顔面神経麻痺発症後5か月を経て当院での治療開始となった関係もあるが、点数的には4点改善されただけである。しかし早期から共同運動や表情筋の短縮などの後遺症状が強く出ており、その割には点数以上に随分落ち着いた自然な表情となった。
■考察
この患者は神経混線による強い共同運動や、顔の患側へのゆがみ、筋肉の短縮やけん引感などの後遺症状が早期から見られる特異な症例である。
なぜ発症5か月時点で後遺症が強く出ているのか、他の顔面神経麻痺患者との相違は、顔へのローラーや電気刺激。顔の筋肉を強く掴んだ。マッサージを自身でもおこない。顔の表情筋運動やマッサージを熱心におこなったという。このあたりが相違点だ。
以前の北海道大学の耳鼻咽喉科のホームページに顔面神経麻痺に対して電気刺激をすると後遺症が出るのでしないようにと書かれていた。自己流の表情筋運動もしかりである。
これに似たことがこの症例に当てはまったように思われる。