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顔面神経麻痺の後遺症と顔面神経麻痺減荷手術後の副反応とに悩まされ、担当医師の対応への不信感につながってしまった症例 42歳 女性
1カ月半前の夕方晩酌中に酒が口角からこぼれて顔の異常に気が付いた。翌日救急外来を受診し入院となり、ステロイドと抗ウィルス薬および脳圧を下げるグリセオールの点滴を5日間おこなって退院。退院時ステロイドの服薬を処方された。しかし症状改善に不安があり転院する事とし別の大病院の耳鼻科に紹介状をもらって受診した。そこではMRIには異常は無かったがハント症候群による顔面神経麻痺の重度と診断された。電気生理学的検査(ENoG)5%だったので医師から手術を勧められ「僕だったらするけどな」と言われた。そして顔面神経麻痺発症から約1か月後に顔面神経麻痺減荷手術をおこなった。手術から10日後担当医師から「経過は良いですよ」と言われたが、手術後から難聴、耳のつまり感と閉塞感。耳内の痛みが出ている。
<初診時>顔面神経麻痺発症から1か月と20日後。顔面神経麻痺減荷手術から23日経過
精神的にもきついので明日心療内科受診予定とのことである。当院での顔面神経麻痺評価テストは8点であった。治療は鍼治療のみおこなった。週2回の間隔での治療を提案した。
<5回目>当院初診時から20日後
毎回治療後はとても気持ちが良い。前回治療後はキーンと言う耳の音がしなかった。耳鳴りの高音が落ち着いてきた。また頭痛が取れ歯磨きが少し楽になった。病院の顔面神経麻痺評価テストでは20点と言われたとのことで、普通20点台に入ると表情の動きはまだまだであっても、見た目はあまりわからない程度にまで回復しているケースが多い。
<8回目>顔面神経麻痺発症から2か月半。当院初診時から1か月経過
顔面神経麻痺評価テストは14点。顔を動かすと耳中でプルプルというアブミ骨痙攣のような音がする。少し食べやすい感じになったとのことでる。
<10回目>前回治療から1週間後
病院耳鼻科を受診し顔面神経麻痺評価テストで24点と言われた。耳鼻科では担当医師から聴力は正常。耳の鼓膜の状態は良い。耳のこもりは低音が聞こえていないのが原因。耳の音は表情筋の音。との説明を受けた。しかしつまりやこもりに加え耳全体がこわばり、ロープで耳を縛られたような状態になっているとのこと。これらの症状は手術以前には無く手術後に現れた症状である
<15回目>顔面神経麻痺発症から3か月半。当院初診時から2か月経過
当院での顔面神経麻痺評価テスト16点。坐位立位での閉眼はまだ出来ず2mmほど開いている。しかし朝起床時に目の乾きはないので臥位では閉眼している。患側の口角に締まりが出てきた
<17回目>
病院耳鼻科受診。病院での顔面神経麻痺評価テストは26点。瞬きをすると口角辺りの頬が動く共同運動が出ている。
<24回目>顔面神経麻痺発症から4か月半。当院初診時から3か月経過
顔面神経麻痺評価テスト20点 20点台に入り見た目はわかり難くなってきた。また自然な目元になってきたが立位坐位での閉眼はまだ少し開いている。食べ物の口内での残渣物は無くなった。
<27回目>
病院耳鼻科受診し顔面神経麻痺評価テストは32点。担当医師から「耳のつまりはあなたが感じているだけで実際には耳はつまっていない」と説明された
<30回>顔面神経麻痺発症から5か月半。当院初診時から4か月経過
当院での顔面神経麻痺評価テストは22点。顔を洗っても石鹸は目に入らなくなった。食事の時にコメカミから頬あたりが口と連動して目が細くなる。病院の耳鼻科通院は止めたとのこと。手術担当医なので通院を勧めたが「信頼できない」とのことである。
<41回目>顔面神経麻痺発症から7か月半。当院初診時から6か月経過
顔面神経麻痺評価テストは30点。うがいでグチュグチュしても水は漏れない。あくびでは目を閉じる。食べる時にコメカミがピクピク動く感じがする。
<その後の経過>
当院初診時からちょうど1年経過した時点で2週間に1度の治療間隔にし、さらに翌月から月に1度の治療とした。これは後遺症状の観察や表情筋の疲労やこわばりを除去する目的である。最終的な顔面神経麻痺評価テストは32点。重度症例で発症後半年を過ぎると現れる症状に、患側の鼻以下が中心線からずれる。患側ほうれい線の上挙。下あごの筋肉の片寄り。瞬き時の口元から頬の共同運動。口をすぼめる動作で目が細くなる。以上のような後遺症が出てくる。しかしこの症例では後遺症に対するご自身の共同運動への日頃の注意やこまめな表情筋運動やマッサージが功を奏し、顔の中心線からのズレや共同運動を最小限に止めることが出来ている。
(考察)
この症例では手術担当医が通院時の担当医と同じで、手術による耳の痛みやつまりなどの手術後の副反応に加えて、顔面神経麻痺そのものの症状説明や態度に患者様が強い不信感を持たれ担当医への通院中止となった。医師にとっては次々に患者が来るのでその一人にすぎないが、患者にとっては担当医が唯一頼れる存在である。これは顔面神経麻痺症状に限ったことではないが、こういったケースがまま発生しており、改めてインフォームドコンセントの大切さを知らされる症例となった。