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顔面神経麻痺による顔への影響は一見わかりにくいが、ぐずぐずと尾を引くような顔面神経麻痺症例 56歳 女性

2ヶ月半ほど前の朝。家族がインフルエンザにかかっており、自身も朝から頭痛がして内科を受診した。しかしその後から顔の動きが悪く瞬きが難くなってきたため再度病院を受診した。そこで末梢性の顔面神経麻痺と診断され、即日入院して9日間ステロイドの点滴を行った。担当医師から顔面神経麻痺に対する手術を勧められ退院1週間後に手術をすることになった。しかし悪いタイミングで執刀医が病気になってしまった。仕方なく他の医師の診察を受けたところ「手術の必要は無い」と今までの担当医とは反対の説明をされた。そして発症40日後の耳鼻科診察ではとても良くなっていると言われた。CTもMRIにも異常はみられなかった。

■診察
[ 初診 ]
一見すると顔面神経麻痺とわからないぐらい顔面のゆがみは少ない。とても顔面神経麻痺手術を言われたほど重度の方には見えなかった。それでも食べると口中の食べ物が偏る。耳中が痛い時がある。日によって涙が多く出る。味覚異常は無い。瞬き時の口角挙上など後遺症はみられていない。当院での顔面神経麻痺評価点数は24点であった。治療は鍼灸治療のみをおこなった。当面週2回の間隔で治療をおこなうこととした。
[ 2回目]
前回治療して口元がすっきりしたと言われた。

[ 5回目]
顔面神経麻痺発症から3ヶ月半、当院初診から1ヶ月経った。顔面神経麻痺評価点数28点。外見上さほど判らないが、ご本人は麻痺感が気になり食欲が出ないとのお話であった。

[ 15回目]
顔面神経麻痺発症から5ヶ月、当院初診から3ヶ月経った。顔面神経麻痺評価点数34点。見た目はほとんどわからない。口と目の周囲の共同運動が軽度に出ている。食欲も出て食事はおいしくなってきた。しかし患側で物を食べるのが動かしにくくやはり気になる。お住まいが遠方な事を考慮し、顔面神経麻痺評価点数の改善状況も良く、食欲も出てきたことから、以後は月2回程度の治療間隔とした。

[ その後の治療経過]
表情筋の筋力低下を防ぐ目的から、共同運動を考慮しながら、患側での咀嚼や両側の表情筋運動などを積極的に勧めた。顔の表情をつくると稍目が細くなるのでフィードバック法をお願いした。こうして発症から10ヶ月、当院初診時から8ヶ月。外見からは判らないが上唇に麻痺感がややあるものの、後遺症状もさほど見られず顔面神経麻痺評価点数も40点満点であり略治とした。

 

■考察

この症例は顔面神経麻痺の手術決定までいった症例であるが、別の医師の診立ては手術の必要性は無いといった判断がなされた。当院初診時点の発症後2ヶ月半時点で、顔面神経麻痺評価点数が24点有ったことから、手術をしなくて良かった症例である。一見顔面神経麻痺はわかり難いが、麻痺感で食欲が出なかったり、表情筋が動かしずらかったり、軽度の共同運動がある為に日常生活でのQOLを長期間下げていた。しかしそれも時間経過の中で落ち着いてきた症例である。

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