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顔面神経麻痺に対する誤った顔のマッサージと表情筋運動が後遺症を出現させたと思われる症例 43歳 女性

一見すると顔面神経麻痺とは見えないが、13ヶ月前に顔面神経麻痺が発症したという女性が来院された。
主訴は口を動かすと目の下が動くいわゆる共同運動と目の下が痙攣する。目が乾くといった顔面神経麻痺後遺症状である。当院で顔面神経麻痺評価点数を測ると満点であった。
顔面神経麻痺発症後はすぐに病院でステロイドとビタミン剤に効ウィルス剤の服薬治療をした。そして2ヶ月間通院して「治った」とのことで病院での治療は終わった。顔面神経麻痺症状の分類では軽症と言える。
しかし発症後半年ほど経ってから目の乾き、眼下の痙攣、口と目の共同運動が現れるようになった。軽症の分類であり普通なら共同運動が出る程とは思えないが、なぜ軽度で顔面神経麻痺の後遺症が出るようになったのか疑問になった。
しかし問診をしていく中で、通院した病院が指導した顔へのマッサージと表情をつくる表情筋運動のやり方に問題があることがわかってきた。
顔面神経麻痺で診察を受けていた病院の耳鼻科では、顔面神経麻痺に対する顔のマッサージをするように指導したが具体的なやり方の指導をしていなかった。また顔の表情筋運動もただ顔の表情を動かすように言われただけであった。
患者様はやり方がわからないままに毎日時間があるたびに一生懸命顔のマッサージと表情筋運動をされたとのお話であった。このような軽症例では間違った顔のマッサージや表情筋運動をするぐらいなら、自然のままに放っておけばおそらく共同運動は避けられたはずである。

■診察
[ 1回目 ]
西洋医学的には顔面神経麻痺後遺症そのものの治療は難しいとされている。目の乾燥については顔面神経麻痺によるものか、年齢的にはまだ若いが更年期症状などでも出現する。またこの患者様の顔面神経麻痺後遺症が今後も進行して行くのかをしっかりと見極める必要があった。その為2週間置きに自身の顔を携帯電話で撮影してもらい、自身で客観的に観察してもらうようにお願いした。この患者様の顔面神経麻痺の症状は外見上はわからない程度の状態である。それを軽減させる為に使う患者様の負担と治療経過の推移、時間、労力があまりにも見合わないと思われることから、10回の治療を1クールとして愁訴の推移を見ることにした。
初診時は鍼灸治療が初めてであり、最小限の刺激を心がけて治療を行った。

[ 2回目]
1回目の治療で眼下の痙攣は消失した。

[ その後の経過]
当初の5回の治療は3日間隔で行った。その後は2週間治療間隔を開けておこなった。その結果痙攣は消失し、目の乾きも消失した。目の開閉に連動して口角が動く共同運動は残っている。しかしそのことは知って観察をしないと他人にはまったくわからない。また共同運動は他人から指摘されないと本人にもわからないことが多い。顔面筋の短縮による顔の歪みや強張り。共同運動の程度は私の目で見て、また患者様自身から見て、さらに携帯で撮影した写真からも進行はしておらず、むしろさらに良い状態となっており、10回の治療で略治とした。

■考察

顔面神経麻痺の中等度以上のタイプでは後遺症は避けられない。しかし軽症例でも表情筋運動や顔のマッサージのやり方を間違えれば後遺症状が出てくると言う症例である。
医療機関においてもまずは顔面神経麻痺の軽度、中等度、重度の判断を点数評価法や電気検査を行うことで診断することが前提である。しかし例え軽度と診断されてもちゃんとした指導を行う必要がある。それさえ行っていればこの患者様の後遺症状は防げたと考えられる。

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