下肢・大腿部内側と後側にひきつった痛みが出て歩けない　８１歳女性

１週間前から右大腿部の内側と後側に痛みとひきつりが出現するようになった。右下肢を少し動かしても筋肉にひきつったような痛みがでるし、歩くのもつっぱって歩けない。そういった状態で家族に抱えられるようにして来院された。他に腰痛や膝関節痛や糖尿病もあり、既往歴として胆嚢癌（２年前手術)、盲腸癒着手術（３０年前）をしている。
腰部の圧迫骨折、動作や両膝関節に痛みと腫れがある。膝はO脚に変形しており、年齢からも症状的にも手術は出来ないと言われている。整形外科を3ヶ月前に受診して医師から「老齢だから膝はこれ以上良くならない」と言われてとてもショックを受けたようだ。家では膝が痛くて四つんばいで這って歩いている。20年来糖尿がある。3年前に乳癌の手術をしている。。
■所見
両膝共に水が有り、シワが消えて光って見える。特に左膝の腫れが目立つ。膝の触診では熱感がある。安静時痛（＋＋）　夜間痛（＋＋）　圧痛が膝周囲にある。
■診察
[ 初診 ]
鍼灸治療は背臥位姿勢で、遠絡療法は座位でおこなった。まず疼きを取ることから始める事とした。治療後足が軽くなったとの事である。
[ ５回目 ]
疼きが消失した。膝に腫れは有るが膝にシワが出てきた。熱感が触っても無くなっている。
[ １１回目 ]
膝の周径が一回り小さくなり、立位動作があまり痛み無く出来るようになった。自転車で外出しており、日常生活が随分楽になってきた。
[ その後の経過 ]
週1回の治療を7ヶ月経った現在も続けている。治療当初四つんばいで這いずり回っていた事が嘘のように、杖をつきながらも外出している。
■考察
年を取るということは、体のあっちこっちにガタがでて来ると言うことでもある。いくら自然の摂理とは言え、つらいときは早く死にたいという声を治療中に聞かされる。膝の関節は常に体重を
受け止め変形、変性する。痛みを止めいかに上手に長持ちをさせることが出来るかが治療の課題である。