まる３日間動けなかった下肢への痛みと痺れを伴う急性腰痛　（ぎっくり腰） ５２歳　男性

一週間ほど前から腰に違和感を感じるようになった。５日ほど前からは姿勢を変える時に腰が抜けそうな感じがするようになり、気をつけながら仕事をこなしてきた。しかし３日前の仕事中に、物を取ろうとして腰を前屈させたときにギクッと腰の抜ける感じが出た。今まで何度もギックリ腰の経験があったため、「やってしまった！」と思ったが、それでも慎重に動いて夕方までなんとか仕事をして自宅に帰り、慎重にそーっとトイレに行き横になっったが、予想した通り寝るとまったく動けない状態になってしまった。寝返りはもちろん足を左右に動かすことさえ難しいほどの状態で、以後１３時間ほどほとんど動けない状態で過ごした。翌日４０分ほどかけてなんとか立ち上がりトイレに行った。以後もほとんど動けない状態で二日間を過ごした。そして今日朝に息子さんと奥さんの介助でなんとか車に乗せてもらい当治療院に来院された。

■所見
歩行の一歩一歩が杖を持つ手に力を入れて、腰に負担がかからないように懸命にバランスをとって歩いている状態である。ベッドに腰を下ろすのも患側を上に横になる動作も腰をかばうために必死の状態に見える。背部の筋の緊張も出ているが腰椎４番５番の椎間関節部の神経根部を圧迫したギックリ腰と判断した。臀部に重さと痺れは下肢外側から足の甲にかけてある。症状が激しいため過去に腰椎椎間円盤ヘルニアがあるか、骨棘などの形態的な変性が神経根部を圧迫しているかも知れないと思えるが、どちらにしても局所の炎症と血行の改善および筋緊張の緩和が先決である。

■診察
[ 初診 ]
患側を上にした側臥位で鍼灸治療をおこなった。兎に角いかに動作を楽にさせることが出来るかを念頭に初回の治療をおこなった。幸い治療直後に患者も付き添った家族も驚くほどに動きが楽になった。VAS１０→４となり座位保持も出来、立位動作も杖無しで出来るようになった。痺れの程度も軽くなったとのことである。自宅では寝ることよりも、動いてもらうようにお願いした。

[ ２回目 ]
＜初診翌日の治療＞
昨日治療後はトイレや洗面など腰をかばいながらも一人で比較的楽に出来るようになった。今朝は起床時起き上がる時に痛かったが、起きてしまうと案外楽に動けるとの話である。痺れは昨日の治療前は膝から下全体に感じていたが、今日は足の甲あたりのみに限局された。
治療は腰痛を中心にした動く為の治療から、動きは比較的に楽なので神経痛を重点とした治療をおこなった。治療後は臀部にあった重みが取れて足全体が動きやすくなった。
■考察
この患者様は「仕事がこれ以上休めない」との事で翌日から仕事に行かれ、翌々日に夕方仕事を終えて３回めの治療をおこない、その状態を確認した上で一旦略治とした。
急性の腰痛（ギックリ腰）に対して鍼灸治療は劇的に効果の出る治療である。この症例のように神経痛や痺れを伴った重度の腰痛・神経痛に対しても、鍼灸治療が著効をそうした一例である。