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4年半記録し続けている嗅覚障害(味覚障害)症例 28才 女性

今回の症例は現在も当院に月1回程度通院されている嗅覚障害症例である。
嗅覚障害になる以前の、正常であった時と比べると、現在は8割方回復し生活上全く支障は無いとのお話であったので、4年半の治療経過を整理する意味からの症例報告とした。

当院初診時から3ヶ月程前に風邪を引いた。それから味覚がおかしい事に気づき、その後匂いが判らないことに気がついた。嗅覚障害発症当初の2ヶ月ぐらいはシャンプーや洗剤の匂いが判ったが、現在はそれも分からなくなった。この間嗅覚障害で通院している耳鼻科では、ドクターから「鼻の神経細胞が死滅したわけでは無いだろうが、そのあたりに問題があるのではないか」と説明された。

■診察
[ 初診 ]
味覚障害については(酸、苦、甘、辛、咸)の五味は分かっている。嗅覚障害ではアロマエッセンス5種で匂ってもらったが、いずれも無臭であった。重度さで言えば嗅覚障害が主で、味覚障害が従といった形である。治療は鍼灸治療と遠絡療法とをおこなった。
[ その後の経過と考察 ]
当院での治療間隔は
初診時から6ヶ月間は週2回の治療。
それ以後1年半は週1回の治療。
2年め以後は月1回か2回の治療を行ってきた。

味覚障害は半年程度で略治にいたっており、風味の改善まで到るには嗅覚障害の改善が必要と考えられた。
嗅覚障害の方は、初めに糸こんにゃくの匂いが分かったのを皮切りに1年後には嗅覚障害程度がVASで言えば10→5まで改善された。その後嗅覚障害もさらに改善されていったが、途中風邪や花粉症で停滞したりして、結局4年半の長い年月を経て8割改善に繋がったわけである。
これらの経過を他の症例のように時系列で書くには余りに長すぎる。
大きくかいつまんで言えるのは、初めの2年間は確かに当院での治療効果と言えなくはない。しかし、あとの2年半は月に1,2回の治療に過ぎず、嗅覚障害が改善されて行ったのは人間の本来持つ治癒力の成果と言える。もちろん嗅覚障害が改善されないままで一生を送る人のケースもあり、この症例では人間の持つ自然治癒力を治療を加えることで後押しして症状固定を防いできたのかもしれない。
■考察
嗅覚障害は鍼灸治療および遠絡療法が功を奏する疾患の一つである。私がこれまで治療させていただいた嗅覚障害症例も幸いなことに治療が功を奏してきた。しかしそれは長い症例でもせいぜい2年程度で略治に到っており、4年半という経過を詳細に観察する経験はなかった。

この経過の中でもちろん個人差はあるが、
匂いの判るもののおおよその傾向。匂いがわかってくるおおよその順番。
風邪や花粉症等による嗅覚障害回復課程のアップダウン。
一旦分かるととても敏感に理解できる匂い。等々

これらは今まで治療してきた他の嗅覚障害の患者様の回復過程にも共通する部分が多い。
そのことを、改めて検証させていただいた。
今後嗅覚障害の治療を行う上で臨床上大変有意義な症例となった。

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