思った以上に早く改善した嗅覚障害　５８才　女性

２年前風邪にかかって以後嗅覚障害になり、３か所の耳鼻科に通ってステロイドの点鼻薬やビタミン剤などの治療を行い、一時はVASで１０→４位まで症状が良くなっていた。しかし１か月ほど前に風邪をひいてから嗅覚障害が再度悪化し、VASで１０→０となった。現在は少しだけ回復したがそれでもほとんど匂わないし食欲も低下している。さらに嗅覚障害になる以前からうつ状態および自律神経失調状態で、心療科系のアビリットや安定剤、眠剤などの服薬をしている。不眠、動悸、めまいなどもあるが最近は良くなってきている。

■診察
[ 初診 ]
当院で匂いのチェックをすると、グレープフルーツ、ラベンダー、ペパーミントいずれの匂いもわからなかった。便の匂い、コーヒーの匂いもわからない。治療は鍼灸と遠絡療法とを併用した。
[ ２回目 ]
グレープフルーツ、ラベンダー「ツーンとした香りが良い」、ペパーミントいずれも少し匂った。特にラベンダーがわかった。。

[ ３回目 ]
家でコーヒー豆の封を開けた時にコーヒーの匂いがわかった。

[ ４回目 ]
この間芳香剤や煮物の匂い、キッチンハイターの匂いがわかった。当院での匂いチェックはグレープフルーツ「甘い、」ラベンダ「よくわかる」、ペパーミント「スッとする」
[ ５回目]
ゴミ箱の消臭剤が今まで匂わなかったのに匂った。当院でテストに使用するグレープフルーツ、ラベンダー、ペパーミントの匂いの違いがよくわかる。
[ ６回目]
孫のウンチの匂いがわかった。当院での匂いチェックはグレープフルーツ、ラベンダー、ペパーミントの匂いがさらによくわかる。
[ ８回目]初診から５１日経過
ほとんど匂いは正常に回復し、略治とした。

■考察
嗅覚障害は回復する時間経過を３か月単位で考えている。例えば当院初診時から３ヵ月ほどして匂いをわずかに感じ始めるというのが一般である。しかしこの症例は５０日で略治に至った。これは２年前に発症し一旦は正常時の半分程度まで回復した素地があったからだと言える。その素地がこの症例のように良い方向にだけ作用するとは限らない。かえって長年の投薬治療等で症状がこじれて複雑化している場合がある。ただそういったケースの方も必ず症状が改善していきます。