耳鼻科で嗅覚障害の治療を受けていたが、嗅覚障害がさらに進行している為、当院を受診された嗅覚障害症例　５７歳男性

３ヶ月ほど前に風邪を引き、嗅覚に異常があることに気がついて病院の耳鼻科を受診した。ＭＲＩには異常が見られず、ニンニク注射の検査でもその時はニンニクの匂いがよく分かった。以後耳鼻科で点鼻薬などの嗅覚障害の治療を受けていたが、２ヶ月後に再度ニンニク注射をした時にはまったくニンニクの匂いがわからなくなっていた。現在病院で受けている治療で良くなるのか疑問を感じた為当院をネットで調べ来院された。

■診察
[ 初診 ]
当院で匂いのチェックをすると、グレープフルーツ、ラベンダー、ペパーミントいずれの匂いもわからなかった。３ヶ月、６ヶ月といった単位での継続した治療の覚悟がいることを説明してから治療を開始した。仕事の関係から治療は週１回の間隔でおこなうこととし、嗅覚に関係する経絡を中心に鍼灸と遠絡療法とを併用した。
[ ２回目 ]
グレープフルーツ、ラベンダー、ペパーミントがなんとなく匂う。

[ ３回目 ]
ワラを燃やす匂いがわかった。
[ 以後の経過 ]
この方は１０ヶ月経った現在も通院されている。当初は週に１度の間隔で来院されていたが。現在は２週間から３週間に１度来院されている。これまでの経過を詳細に記録しており、以下に匂いが分かってきた順に記載する。
[ 1～2ヶ月後]
当院でテストに使用するグレープフルーツ、ラベンダー、ペパーミントの匂いの違いがわかる。レモンの匂い、整髪料の匂いがわかる。カレーの匂いが他の部屋から入ったときにわかった。
[ 2～４ヶ月後]
ガソリン、軽油、灯油、ペンキの匂い、オートバイの排気の匂いがわかった。石けんの匂い、トイレの匂いがわかった。
[ ４～６ヶ月後]
生ゴミの匂い。汗の匂いがわかった。コーヒーをたてている時の匂い、コーヒー豆の匂いがわかった。
[ ６～８ヶ月後]
新車の匂いがわかった
。匂いの比較（ＶＡＳ）で最も悪かった初診時を１０、正常を０とすると→３という数字である。
[ ８～１０ヶ月後]
日常でのほとんどの匂いはわかるようになった。インスタントコーヒーの匂いがわかった。今までたてている時のコーヒーの匂いはわかっても、コップに入れたコーヒーの匂いがわからなかったが、それがわかるようになった。ほぼ嗅覚障害になる以前の状態にまで回復したと考えられる。略治とした。

■考察
嗅覚障害になった場合はたとえ西洋医学的に治療の改善が見られない場合でも、鍼灸治療が著功を奏することをしばしば体験します。鍼灸治療が日本に伝えられてから１５００年あまりの間。日本人の健康と病気の治療を漢方薬と共に担ってきました。
その普遍性はこれからますます西洋医学を補完する医療として頼りにされるものと考えています。