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医師の治療依頼書を携えて来院された顔面神経麻痺症例 36歳 男性

20日前に瞬きがしづらくなり翌日コメカミのあたりが痛くなった為歯医者を受診した。しかし歯に問題はないと言われ、総合病院の脳神経外科を紹介された。そこでヘルペスが原因の顔面神経麻痺と診断されステロイドの服薬とビタミンB12および胃薬を処方された。そこの病院が遠方だったことから、近くの総合病院の脳外科を紹介されて服薬による治療を現在も続けている。その脳外科のドクターから「眼瞼下垂の治りが悪い為鍼灸治療を受けることを勧められた」との事で、当院の初診時に医師から私宛の治療依頼書を持参されて来院された。

■診察
[ 初診 ]
当院初診時顔面神経麻痺柳原40点評価法では8点。
味覚に異常がある。左顔面を触ると痛い。瞬きが出来ない。話すと顔が引きつる。一見みると顔の歪みはさほどきつくは思えない。しかし評価点数が低く出ており後遺症を予想して治療と指導をおこなった。治療は鍼灸治療と遠絡療法を併用し週2回の間隔で治療することとした。

[ 6回目]
顔面神経麻痺評価点数は12点。頬が少し動きだし、目の開閉の幅が少し広がっている。また仰臥位では閉眼出来るようになった。

[ 26回目]
顔面神経麻痺発症から3ヶ月が経過。顔面神経麻痺評価点数20点。

[ 42回目]
顔面神経麻痺発症から6ヶ月が経過。顔面神経麻痺評価点数26点。
瞬き時の口角の引きつりが見られ共同運動が出てきている。しかし見た目からもご本人の顔面神経麻痺に対する意識も薄れてきており、当院での治療を週1回の治療間隔にした。

[ 50回目]
顔面神経麻痺評価点数32点。減点対象の項目もほとんど正常に近く、まったく正常とは言えないので減点としており、ほぼ顔面神経麻痺発症以前の状態に近づいている。

[ 54回目]
顔面神経麻痺評価点数38点。評価点数的には治癒とみなせる点数となった。
ご本人の顔面神経麻痺への意識も大きいものとはなっておらず、顔の状態には満足されておられるようなので顔面神経麻痺発症から8ヶ月と9日目で略治とした。
ただしイーッと口を開くと完全な左右対称とはなっていないことと、顔の表情を動かした時の鼻唇溝の状態と眼裂のやや狭小が見られるので、毎日の伸張マッサージと共同運動を防ぐための日常の表情への意識およびフィードバック法を指導させていただいた。

■考察

この症例は面識の無い遠方の医師からわざわざ私宛に顔面神経麻痺患者の治療依頼をいただいたものです。患者様も遠方に関わらず熱心に通院され症状も無事に快癒されたのでホッとした症例です。
以前にも書きましたが、私が病院勤めをしていた頃に医局に顔面神経麻痺患者の症例を提出して、顔面神経麻痺患者を東洋医学に是非受診させて欲しい旨の要望を出したことがあります。幸いに医局の中でもそれを受け入れてもらえて、顔面神経麻痺に罹患された患者様を数多く診させていただきました。またそのことで顔面神経麻痺の患者様にも随分喜ばれた経験があります。
顔面神経麻痺には東洋医学とりわけ鍼灸治療と遠絡療法は大きな効果があります。
その事を医師にも理解していただけるように今後も努力をしていきたいと考えております。

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