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出産前日に顔面神経麻痺が発症した症例 33歳 女性

3ヶ月前の出産2日前に左耳の後ろが痛くなった。出産前日に口がうまく動かず食事が摂れなくなり顔面神経麻痺が発症した。正式に顔面神経麻痺と診断されたのは出産5日後に総合病院の耳鼻科を受診した時で、聴力検査で異常はなく発疹も無かったので末梢性の顔面神経麻痺でもベル麻痺と診断されたようだ。顔面神経麻痺に対する耳鼻科での治療は出産直後のためステロイドを使用せず、アデホスとビタミンB12が処方され当院受診時点でも服薬していた。

■診察
[ 初診 ]
当院初診時顔面神経麻痺柳原40点評価法では12点。
味覚正常。左耳の後ろが時々痛む。耳鳴りが時々ある。発症から3ヶ月時点で評価点数が12点では後遺症が予想されるため、自宅での伸張マッサージと共同運動予防の為に日常の表情における注意点を指導させてもらった。治療は鍼灸治療と遠絡療法とをおこなった。
治療間隔はお子さんをご家族に見て貰う都合等から週1回とする。

[ 7回目]
顔の印象が変わり、良い方向へ向いてきている。寝た姿勢では閉眼が可能になっている。

[ 11回目]
40点評価法では16点。口を動かすと左眼の周囲が動く共同運動が出ている。
子守等から腰痛が出ており、それまで訴えなく辛抱されていたようだが顔面神経麻痺と併せて治療をおこなっていくこととした。

[ 17回目]
顔面神経麻痺評価法で20点。

[ 31回目]
顔面神経麻痺発症から10ヶ月、当院を受診されてから7ヶ月が経過。顔面神経麻痺評価法で30点。左口角が左側に引っ張られて上に挙がってきておりその変化を注視している。総合病院の耳鼻科の担当医師は「顔面筋を鍛えればバランスが取れるようになる。顔面神経麻痺そのものは良い」と説明されたようだ。
私自身の意見としては、顔面神経が再生している途中経過にあり顔の部分によってアンバランスが出ているのではと考え、落ち着いてくる時期が来るだろうと予想しているが、顔の事なので注視している旨を説明した。

[ 42回目]
ご本人も顔のゆがみの手術を主とした医大の形成外科にも相談にいかれたが、手術対象ではない旨を説明されたようだ。その後顔の口角の挙上も予想通り随分落ち着いてきた。この時点で顔面神経麻痺評価法で32点となった。仕事にも復帰されたとのお話であった。。
顔面神経麻痺による顔の歪みについては、まだお若いので顔に少しでも問題が有れば大きな負担になるが、ご本人から見て一応許容できる範囲にまで回復できたようだ。また治療者である私から見ても、顔の事で他人の眼を意識することはない時点まで回復したと思えた。

■考察

出産前日に顔面神経麻痺が発症するという、とても悪いタイミングで顔面神経麻痺が発症した。その為西洋医学による薬物治療にも制限が生じた。当院へ来院されたのも発症後3ヶ月が経過しており、顔面神経麻痺の評価点数もその時点で12点という厳しい状態であった。
それだけに後遺症である偏った筋の短縮による口角の歪みと、眼下のひきつりと言う共同運動が出現したわけだが、女性が中等度以上の顔面神経麻痺に罹った場合は、治療者としてもなんとか後遺症状が出ないように、そのことが最大の標的となり、治療する側としても出現した後遺症に胸を痛めることも時に経験する。
顔面神経麻痺に罹患された患者様の中には、すでに後遺症が出てから来院されたり、当院受診時点で顔面神経麻痺が中等度から高度にも関わらず、発症後の日にちが経過しすぎているケースもある。
顔面神経麻痺に罹患されたら兎に角早い時点で鍼灸治療を受診していただきたい。そのことを治療者として切に希望する。

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