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顔面神経麻痺手術後8年して反対側も顔面神経麻痺になり手術を勧められた症例 67歳 女性
18日前の朝食時に顔と耳に違和感を感じた為耳鼻科を受診した。しかし特に悪いところは無いと言われた。8年前に顔面神経麻痺で手術をした経験が有った為、自身が顔面神経麻痺を疑い、以前かかった総合病院を受診した。8年前は右顔面であったが今回は左顔面神経麻痺と言われた。すぐに入院となり、ステロイドの点滴を1週間ほどおこなった。また電気生理学検査と40点法による評価テスト法を実施したが結果は教えてもらっていない。8年前も同じ病院で顔面神経麻痺の治療と顔面神経減圧手術をおこなっており、今回も入院中に手術を勧められた。しかし6年前に手術した右顔面は顔の非対象と違和感が強く残っており、手術後は目を閉じると自身の手で瞼を開けないと開けられない状態となった。その後は後遺症状に悩まされ年々不自由さを感じていたらしく「手術は絶対にしない」と断ったとのお話であった。他に現在糖尿病、高血圧症の治療をおこなっている。
■診察
[ 初診 ]
8年前に手術した右側に表情筋が引っ張られて極端に顔全体が歪んでいる。また手術側の瞼が閉じて開けられない状態となっている。視力は今回発症した左側で見ている状態で、両目からは常に涙が出ている為始終ハンカチで涙を拭いておられる。左顔面は当院で顔面神経麻痺40点評価法をおこなうと8点であった。治療は鍼灸治療と遠絡療法と併用しておこなった。顔面神経麻痺の日常の過ごし方の注意点や顔のマッサージ法などをお話させていただいた。
[ 7回目]
顔全体の極端な右側へのひきつりがゆるんできて、本来の顔だと思える表情になってきた。
眉毛の高さも差が改善されてきている。むしろ手術側の方が患側に思え、手術側である右側は前頚部の筋の引きつりを強く感じておられる。
[ 21回目]
顔面神経麻痺発症後4ヶ月が経過。顔面神経麻痺評価点数14点。口の膨らませが左右差はあるものの出来るようになった。また食事も比較的不自由なく出来ている。
[ 35回目]
顔面神経麻痺発症後半年経過。顔面神経麻痺評価点数18点。この点数は右顔面部を差し引いた形での点数づけである。左顔面はまばたきすると唇が少し動き、頬と口周囲に軽度だが筋の短縮もあり後遺症状が少し出ている。手術側である右顔面にも治療をおこなっているが今回発症した左側に比べると、右顔面の後遺症状は筋の短縮症状や共同運動などきつく際立っている。
[ その後の経過]
この患者は子供さんの仕事の関係から他県へ転居した為半年間の治療しかできなかった。それ以後の経過は不明である。顔面神経麻痺の手術をされたにも関わらず、手術側の状態がこれほどひどい例もはじめてのケースである。ただし手術前の状態や今回の左顔面神経麻痺発症以前の状態を診ているわけではないので。後遺症状と手術の成否との関係はわからない。今回発症した左顔面神経麻痺についても半年経過して18点という点数で、筋の短縮と共同運動も軽度ではあるが出現している。ただし右顔面が正常の場合は顔面神経麻痺評価法で20点近くなると、顔の状態は見た目ではさほどわからないのが一般的だ。
■考察
顔面神経麻痺は「治療せずに放っておいても治る」と言う話を耳にすることがある。たしかに軽度の麻痺ならばデータ的にもそれは肯定できる。しかしこのケースのように顔面神経麻痺の手術までしたにも関わらず、後遺症状に悩まされるケースがあることも現実である。後遺症を予想して当初から鍼灸治療を含めたケアを年単位でするとしないとでは、大きな差があることは間違いない。