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顔面神経麻痺の後遺症を予想した対策が功を奏したと考えられる症例 40歳 女性

5日前の朝に耳鳴りがありその夜の11時頃に顔に異常を感じて救急外来を受診し、そこで耳鼻科へ行くよう勧められた。翌日近所の耳鼻科を受診し末梢性の顔面神経麻痺との診断を受けた。耳内の発疹(-)・聴力正常・柳原40点評価法の検査は16点との事であった。治療はステロイド点滴はせず、ステロイドの服薬と抗生物質・ビタミンB12を処方された。当院へは発症5日目に来院し40点評価法で14点であった。味覚は舌の左側面が全く感じられない。舌先端部が痺れているとのことである。時間経過からもう少し症状が悪化することを告げた。近所の耳鼻科が頼りなく思われたのか耳鼻科で紹介状を書いてもらい翌日に総合病院を受診された。そこで1週間のステロイド点滴を受けた後に当院2回目の受診となった。

■診察
[ 2回目 ]
予想通り症状の悪化が見られ口角と口唇が左下へ強く引っ張られていた。治療は鍼灸治療と遠絡療法を併用することとし週2回の治療をおこなうことにした。後遺症が出ることも考慮に入れて、伸張マッサージと共同運動を考慮した顔面表情運動を、自宅で一日3回するようにお願いした。

[ 7回目]
舌尖部の痺れが軽くなり味覚が戻ってきた。。

[ 17回目]
病院を受診し、40点評価法で18点の評価。唇のラインが平行線に近くなってきた。

[ 33回目]
発症から4ヶ月当が経過。病院での40点評価法は26点。鼻横や頬・下顎に圧痛がある。院での治療を開始してから1ヶ月半が経過。安静時の表情はほぼ正常である。
[ 45回目]
5ヶ月が経過し後遺症が出てきている。欠伸をすると目を閉じてしまう。

[ 52回目]
発症以来6ヶ月が経過。病院での40点評価法では32点。安静時も話していても、顔面神経麻痺があることはほとんど解らない。しいていえば下唇が左下にやや落ちている。ただし筋の短縮と痙攣および共同運動の推移をしばらく診る必要がある。。

[ 74回目]
顔面神経麻痺発症から9ヶ月が経った。下唇が左下に落ちていたのも改善された。注意して見てもまったくわからない状態である。評価法のスコアは36点となり正常値となった。ただし左目のウィンク動作で左の口角がピクピクと動く共同運動がある。また左の鼻翼が動かしにくく左の鼻の下から上唇にだけ麻痺が残っている。だが見た目ではまったくわからない状態である。おそらく左鼻の下と鼻翼部は神経繊維の再生がまだおこなわれておらず、今後再生されるとすればさらに良くなる可能性があると期待している。

■考察

顔面神経麻痺の中等度以上のタイプでは後遺症は避けられない。5ヶ月を過ぎたあたりから筋の短縮や共同運動が出てくる。しかしあらかじめ後遺症を予想し、初期から予防をすればかなりの部分で後遺症の程度を軽く抑えられると考えている。この症例でも初回時から後遺症の指導をさせていただいた。加えて患者様ご自身が伸張マッサージ等きちっと実行された。その成果として4ヶ月以内で治るような軽症タイプの方と同じくらいの高い顔面神経麻痺評価スコアが
出ている。この事が後遺症対策の有効性を示す何よりのデータと言えないだろうか。

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