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顔面神経麻痺に耐え難いような坐骨神経痛・股関節痛を抱えた症例 61歳 女性

2週間前に顔面神経麻痺が発症し総合病院を受診して入院となった。検査ではMRI異常(-)耳鼻科検診異常(-)左顔面神経ベル麻痺と診断された。入院中にステロイド点滴を受け、退院した現在はビタミンB12の服薬のみをしている。当院では顔面神経麻痺に対する治療を週2回の間隔で続けることとしたが,顔面神経麻痺に対する治療を行って1ヶ月過ぎたあたりで、坐骨神経痛と股関節痛の為に、その疼きと動作時の痛みで日常生活が大変辛い旨の訴えがあった。鍼灸治療は顔面神経麻痺には効果があるが、神経痛と股関節痛には適応しないと思っておられたようで、2日後にペインクリニックを受診する予定とのお話であった。たまたま当院のパンフに坐骨神経痛の文字が有り試しに訴えられたようである。この時以来顔面神経麻痺の治療に加えてと坐骨神経痛と股関節痛の治療をすることになった。その為治療間隔を週2回から週3回に増やすことにした。

■診察
[ 初診 ]
初診時の顔面神経麻痺40点評価法でのスコアは10点。左耳奥に痛みが有り味覚異常は無い。その他特筆事項として高脂血症とアキレス腱断裂(10年前)がある。治療は鍼灸治療と遠絡療法をおこなった。完全閉眼ができないためサングラスによる眼の保護と、顔を直接寒風にさらさないこと、顔のマッサージをすることを伝え、週2回の治療間隔での来院をお願いした。

[ 4回目]
まばたきが少し出来るようになった。口の開閉時の歪みが改善された。食事が食べやすくなった。耳奥の痛みが消失した。額にシワが出てきた。

[ 9回目]
顔面神経麻痺40点評価法でのスコアは20点となり、治療経過は順調に推移した。

[ 13回目]
当院での治療を開始してから1ヶ月半が経過。安静時の表情はほぼ正常となった。
しかしこの時点で顔面神経麻痺とはまったく別の愁訴の訴えがされた。腰痛・坐骨神経痛と股関節痛の為に日常動作に大変な支障があるとの事である。安静時痛(+++)歩行時痛(+++)右下肢をひねる動作や開脚動作時は股関節痛(+++)である。
現病歴としては中学3年からテニスを始め、22年前にテニスで国体に出場したがこの頃から腰痛と坐骨神経痛を抱える日常となっている。股関節痛は3年前から消えることなく開脚時に痛みを伴い、開脚角度に制限を抱えた状態で生活を送られているとのお話であった。
腰痛および坐骨神経痛に対してはまず安静時の痛みを取る事とし、顔面神経麻痺の治療と並行して治療を行うために週2回を3回にすることにした。

[ 14回目]
前回の腰痛・坐骨神経痛に対する治療以後局所の激しい痛みは消失し眠れるようになったとのことである。

[ 15回目]
坐骨部を中心にした安静時の疼きは消失した。
股関節については念の為病院での検査をお願いしていたが担当医師から所見と診断の報告書をいただいた。それによると右股関節は変形し大腿骨頭や臼蓋部の浮腫と関節液貯留がある。腰は腰椎の椎間板が全て変性し椎体の骨棘形成がある。また腰椎の全てで高度の脊柱管狭窄がみられるとあった。

[ 28回目]
顔面神経麻痺評価法では2ヶ月半で32点となった。股関節の開脚角度と痛みは消失している。

[ 52回目]
顔面神経麻痺発症から5ヶ月経過し顔面神経麻痺評価法では36点となり正常範囲の数値となった。腰部と臀部の坐骨神経と関連した部位の痛みは消失している。股関節部の訴えに関連した歩行時の後ろ足を蹴る動作時の、股関節から膝への痛みに対する治療を重点的におこなっている。

[ 64回目]
顔面神経麻痺についてはほぼ正常である。股関節の痛みも消失しているが、股関節の屈伸と内旋動作に角度制限があり、現在その治療を行っている。治療間隔も週1回とした。

■考察
顔面神経麻痺というのは顔の疾患だけに何よりも最優先で治療をおこなう。重度の場合は後遺症が残る事さえあり、顔面神経麻痺の患者は例え他に愁訴があったとしても顔の治療を希望する。このケースの場合鍼灸治療が坐骨神経痛に効くと知らなかったこともあるが、1ヶ月半の間顔面神経麻痺以外の愁訴は隠されている。しかし腰痛も神経痛も股関節痛も耐え難いような強度の痛みの為、日常生活大きな支障をきたしていた。顔面神経麻痺の治療と他につらい愁訴とを並行して治療することは治療する側も大変なことがよくわかった。幸いなことに愁訴がいずれも軽快したことに、全力で治療したことが報われてほっと安堵した。よい経験をさせていただいた症例である。

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