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小児の顔面神経麻痺 2歳 男児
6週間前に熱が出て近医の小児科を受診した。しかし39度前後の熱が続き耳後が腫れてきた為総合病院の小児科を受診し、すぐに入院となった。CTでは異常は見られなかったが入院中に顔面神経麻痺が発症してしまった。病院では顔面神経麻痺に対する治療として1週間のステロイド点滴を行い計2週間入院をした。退院後も顔面神経麻痺治療の為病院に通院しているが、治療としてはビタミンB12(メチコバール)のみであり、お子さんの顔の歪みが改善されないことに親御さんが心配されて当院を受診されることとなった。
■診察
[ 初診 ]
安静時の顔の表情はさほどに麻痺を感じさせないが、笑うなどの口を開く表情では口が健側に引っ張られ、健側の鼻唇溝が極端に目立つ表情となった。また眼の大きさも左右差が顕著で瞼も完全閉眼は出来ない。2歳児なので40点柳原法の点数をつけ難いが16点から18点程度だろう。
治療は小児鍼と遠絡療法を併用しておこなった。治療後の注意点として大人同様に、母親の協力と顔のマッサージをお願いした。治療は週2回することとした。
[ 経過 ]
治療3回目で健側への鼻唇溝の偏りがかなり改善され、開口時の口の歪みが中央に寄ってきた。治療後おやつを食べる状態を見ても不自由さは感じられない。眼も完全閉眼できており、瞬きの早さも左右差はない。
治療5回目には口を大きく開けると、やや歪みがあらわれる程度になり、治療8回目で正常な状態にまでほぼ回復した。
■考察
小児、特にこの症例のような2歳児では、大人と違い顔面神経麻痺のゆがんだ顔を気にするとか、治そうなどという精神的な不安感や治療するという意識はまったくない。顔から意識が無いことがむしろ治る為にはプラスに働くようだ。したがって治療中も大人しくするわけではなく、遊びのような中でなだめたり注意をそらしたりしながらまともな治療をやらしてもらえない。それでも子供の治癒力は大人と違って大変高い。そのことを顕著に示した症例である。
■余談
20数年前の話になるが今も気にかかっている症例がある。顔面神経麻痺にかかった当時3歳~4歳ぐらいのお子さんの例である。父親が医師で、鍼灸治療所には母親に連れられて来院された。来院時には父親からすでにステロイドの治療を受けていた。顔面神経麻痺が出た原因はお子さんが風邪で高熱が出た為、冷凍されたアイスノンを顔にあてて眠り、直接冷凍部分が顔にあたっていたために発症したという母親の説明であった。母親は自分の責任として御主人から責められ、ご自身をも責めておられた。今から思えば原因は、はたして冷凍によるものか、高熱によるものか、風邪やその他のウィルスによるのか不明である。
問題は、このお子さんが泣き方が激しくて治療などとてもできるような状態ではなかったことだ。顔面神経麻痺の程度はかなり目立っていたように記憶している。一度来院されて以来お見えにならなかった。おそらく子供が泣くことに気を使われたように思う。このお子さんの顔面神経麻痺は「どうなったのだろう?」20数年経った今も子供を診る度に思い出してしまう。
「きっと子供の回復力は強いから完治したのだろう。」・・・そう思いたい。