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片方の目が閉じない(閉眼不可)が、そうなった時期がハッキリしない。 顔面神経麻痺症例 20歳 女性

「片方の目を閉じることが出来ない。その原因が不明でそうなった時期もはっきりわからないが2年ぐらいは経つ」との訴えで患者様が来院された。既往歴として5年前に閉じない側の聴神経腫瘍切除手術を行い。取り切れなかった聴神経腫瘍に対するサイバーナイフ治療を4年前におこなっている。聴神経腫瘍はまだ取りきれず残っているらしく、医師から「他の神経にくっついていてこれ以上取ると他に影響が出るので難しい。腫瘍転移の可能性は無い」と説明されている。

 

<初診時>

聴神経腫瘍に対する手術が4年前と5年前。閉眼出来なくなった時期が2年前ぐらいだとすると、手術と閉眼不可の時期にタイムラグがある、手術した側の耳は手術後全く聞こえなくなっている。しかし耳鳴りだけはある。反対側の耳は耳管狭窄症で音が響く。目を閉じてもらうと患側の目が半分ほど白目の状態で開いている。

問診中に鼻以下のラインが正中線から明らかにずれていることに気がついた。ご本人にそのことを話すとまったく気がついておらず、私に指摘されて治療室の鏡を見て今初めてわかったようだ。

顔面神経麻痺は発症日がはっきりとわかる病気である。手術によって顔面神経麻痺が出たとしても発症日時は明確にわかる筈だ。問診していくと3年程前に頬を中心に顔が引き攣った感じがしていて、病院のリハビリに通っていた時期がある。本日顔面神経麻痺評価点数を測ると20点である。額のシワが患側には無い。健側と比べて患側口内の狭さや堅さを感じておらず、食事にも不自由さはない。瞬き時に口元が動く共同運動が出ている。このことから既往歴に顔面神経麻痺があり、顔面神経麻痺に気がつかないまま経過して後遺症だけが出ている状態である。ただしご本人が言うように閉眼不可が2年以上前からあったとしたら、原因が顔面神経麻痺だけではない可能性がある。

治療は末梢性の顔面神経麻痺後遺症に対する鍼灸治療と遠絡療法をおこない経過をみることにした。

 

<2回目>

2回めの治療時点で前回より白目の幅が3mm程度に狭くなっている。また鼻以下が中心線からずれていたのが、かなり中心に戻っている。症状が良くなっていることは歓迎すべきことだが、このことをどう考えるかが疑問となった。少なくとも共同運動が出ているので4ヶ月以前に顔面神経麻痺は起きている筈で、たった2回の治療で急激に回復するとは考えにくい。

 

<3回目>

顔面神経麻痺評価点数26点。顔のつっぱりが治療後は良くなるが、時間経過と共に少し良いぐらいにまで(10→8)戻ってしまった。口笛を吹く動作は中心からずれるものの、随分改善している。

 

<8回目> 当院初診時から1ヶ月半経過

顔面神経麻痺評価点数30点。ゆっくりなら閉眼可能となった。眉間と鼻筋と唇中央のラインが真っ直ぐになった。耳鳴りも気にならなくなった。額のシワが額全体の3分の2以上に伸びている。強い閉眼時のマツゲの高さに左右差が見られ、健側ほどしっかり閉じれていない。

 

<その後の経過>

当院初診時から8ヶ月経った現在も治療を兼ねての経過観察として月に1回程度来院されている。顔面神経麻痺評価テストは40点満点の34点。顔の表情は自然な感じで顔の歪みは無い。当初の主訴であった目の閉眼不可は改善され、目の開閉スピードも速くなっている。現在は患側の頬のつっぱりと筋短縮に伴うほうれい線が目立たないかを経過観察と治療の主としている。

 

(考察)

初診時は顔面神経麻痺として来院されたわけではなく目が閉じないということだった、視診や問診の中で顔面神経麻痺症状がわかってきた珍しいケースである。ただ顔面神経に影響が及んだ原因や発症時期など不明な点が多い。ただ原因がどうであれ、若い女性だけに顔の状態が少しでも良くなってもらえれば良い。そう思って治療を続けてきた症例である。

 

 

 

 

 

 

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